菜箸をしまう位置を決める
当時、衝撃を受けた言葉。
『台所の設計は本当に面倒ですが、(中略)
菜箸をしまう場所を決める努力が、その家の住み心地を
決定するといっても過言ではないでしょう』
台所、キッチンをつくるのは大変だけど
菜箸(いろんなキッチン道具)をしまう場所を
建主さんと一緒に考えて決めなければ
住み心地が悪くなる。
この言葉は
「住宅建築」2001年12月号の
「新緑住居」という住宅の設計について
書かれた中の一部。
「新緑住居」は、
設計者である建築家 村田靖夫さんのご自邸。
もちろん、この文章をお書きなったのも村田さんです。
さらに別のページには、
『キッチンは主婦にとっては最も大切なところだ。
それを面倒というなら設計をやめた方がよい』
とキッチンの設計がいかに重要かを
書かれています。
これらの言葉を目にした当時の私は、
とても衝撃を受けて、まだ衝撃を受けるほど
量的にも質的にも設計をしていないくせに
自信を失ったのでした。
その当時、少ない設計の機会にも関わらず
予算の問題にして、キッチンをつくることなく
システムキッチンを採用していたのだが、
これを機に、なんとかコストを調整しながら
工夫をしつつ、できる限り細かく建主さんと打ち合わせをし
キッチンを製作するようになっていった。
とにかく粘り強く、建主さんがどう使うかを聞き出し、
建主さんに使っている皿や調理器具の寸法を測って
スケッチにしてもらい、それらがきちんと収まるように
引出しや扉をつくっていくという地道な方法を
繰り返していった。
このことは今でも同じようにしているのだが、
建主さんによっては、それほどキッチンの使い勝手に
強いこだわりを持っていない方もいることを知ることになった。
共働きが当たり前の現代では、そもそも毎日料理をされない
という方もいる。
そんな人に対しても、同じようにしつこくキッチンのつくり方を
考えて決めていくことは違うということもわかるようになった。
なので、いまは、無理につくろうとはせずに
システムキッチンが良いという方には
つくらないことも多くなった。
とはいえ、私に設計をご依頼される方の半数以上が
キッチンの製作を望まれるので、
今でも村田さんの言葉を大事にして
粘り強く収納の位置を決めたり使い勝手が良くなるように
工夫できるところがないか毎回新たな気持ちを持って
キッチンの製作に臨んでいるところです。
そうしてできたキッチンは、建主さんの都合に合わせているので
一様にならず、収納するものによって引出しの深さが変わるので
正面から見たときに、引出しの前板が揃わないことが多い。
スッキリつくりたい方にとってはダメに見えるかもしれないが
私からしたら「建主らしさ」があらわていてとても素敵に見える。
そもそも、菜箸をしまう場所を決めるためにキッチンをつくって
いるので、引出しの前板が揃おうが揃うまいが、私にとっては
あまり関心のないことなのだ。
製作キッチンの事例
・趣味と暮らす家
・ぼくらの家
・鎌ケ谷の家D
・土間から四季を、呼吸する家
・白子の家
・アオハダの家
・四街道の家
・蓮田の家
・おゆみ野の家
・西船の家
・ANA nHOUSE
・三山の家
・ちはら台の家
半既製品を利用したキッチンの例
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