敷地の記憶
設計をする際に、
敷地の条件が大きく計画に影響することは
いうまでもありません。
平屋を建てる場合、
面積の広い敷地である場合が多いのですが、
意外と、家を建てることができる部分が少なく、
建てる位置が自由で無いことが多い。
千葉県の平屋「ぼくらの家」もそうだった。
敷地には、
もともとご両親がお住まいの2階建てが建っていた。
ご両親が敷地内の別の場所に新居を建てることになり、
「ぼくらの家」の計画は始まりました。
敷地面積は400㎡以上用意されたのですが、
ご両親が大事に育てた松や伽羅が南側の敷地を
埋めるように植えられており、
できる限り残すことが条件になって、
大きな敷地でありながら建てることができる部分は
限られていました。
建てる部分が限られたことは、
設計の自由度が狭められるので、
不利な条件でもありますが、
配置計画が自ずと決まってくるので
悪いことばかりでは無いというのが
体感的な私見です。
具体的に設計をし出していくと、
軒と植木が干渉してこないか、
空間として窮屈な庭にならないか、
新しい家と元々ここにあった植木との相性はどうか、
などなど、
敷地の中に操作するのが難しい要素があるのは、
設計中、難しく感じます。
庭には、ご両親の “ 想い ” が詰まっていますし、
植木には “ 何十年もここのあった ” という
存在感があります。
こうした『敷地の記憶』のようなものと
新しい家をどうやって馴染ませるか。
「ぼくらの家」の場合は、
積極的に関係をつくることはしなかったのですが、
限られたスペースの中でも、細かい寸法を検討しながら
配置を決めていくことをしました。
それがよかったのか、
敷地と家の関係、植木との関係も
距離感はとても馴染んだものになったように感じました。
たまたま、ご両親が特に大切にされていた松が
「ぼくらの家」のダイニングに設けた大きな窓の前の
良い位置に来たのは、松にとっても、家にとっても
うまくいっているように感じました。
『敷地の記憶』は、
制約にも、手がかり(ヒント)にもなって
その敷地ならではの家づくりをすすめる
大切な要素ですね。