雨が降っても窓をあけておける工夫
今年も梅雨の時期がやってきました。
ジメジメしていて、室内は湿度が高くなっています。
外も湿度は高いのですが、
それでも外気を入れて換気をする方が室内の湿度は下がります。
何よりも、空気を入れ替えたいですし、エアコンに頼りすぎずに
通風で少しでも涼をとる暮らしがしたいものです。
しかし、
こうして毎日雨が降ると、窓を開けて換気がしにくいかと思います。
なので、どうしてもエアコンに頼りすぎる暮らしになりがちです。
今年は、コロナのこともあるので、できれば換気がしたいですね。
目次
軒の出と庇の昔と今
昔の家は、こうした日本の気候に合わせて家をつくっていたので、
雨の日でも窓を開けて換気できるようになっていました。
窓の上には深い軒があったり、庇を設けていたり。
これは換気だけでなく、日射をコントロールするのにも有効です。
現在の住宅は、敷地が狭くなったことで、軒を出せなくなり、
それが現在の感覚の見た目の良さと合致することもあって
軒が出ていない住宅が多くなっています。
庇も「カッコ悪い」ということで、庇をつける家が無くなっていきました。
(そもそも、本質的には、軒や庇はカッコ悪いとかカッコイイとかの
主観で決めるものではなく、日射を遮ったり雨から建物を守ったり
暮らしやすくなるために考えられる建築的な装置なので
その家に合った軒の出や庇を計画しなければならないものです。
その上で、その軒や庇の形態の美醜を検討すべきものなのです)
窓も、通風という観点で設置されることよりも
外観的なことや視覚的な理由で位置やサイズが決まることが
一般的になってしまっています。
私の考え
私は、昔の家のように、日本の気候に合わせた機能を持つ家が
やはり日本の家には必要だと考えて、家をつくりたいと思って
設計活動をしています。
(日本の気候に合わせて日本の家をつくるというのは当たり前なのですが
今の家づくりはそうなっていないことが一般的です、、、)
深い軒の場合
例えば、
「白子の家」撮影 小泉一斉
大きな木製サッシの上に深い軒を設けて
大雨でなければ窓を開けておけるようにしたり、
「四街道の家」撮影 小泉一斉
アルミサッシの場合でも深い軒をかけて
雨を防ぎ、通風できるようにしています。
また、この軒下空間は濡れないので、
洗濯物をちょっと出しておくということもできます。
深い軒+庇の場合
複合的なやり方をした例が
「鎌ヶ谷の家D」撮影 小泉一斉
幅の広い木製サッシの上には深い軒がかかっていて
ほぼ雨を凌ぐことはできるのですが、
屋根の向きが逆なので、写真の右側にいくほど
屋根が上がっていくので少し雨がサッシにかかってしまう
こともあるかと考えて、サッシのすぐ上に庇を設けています。
これで、結構な雨でも窓を開けておけます。
(この家をつくっているときに、大雨が降ってきたことがあったのですが
窓を開けておいても雨が室内に入ってくることはありませんでした。
その時のブログはコチラです)
2階建ての1階の窓は?
2階建ての1階部分には屋根がない場合が多いですね。
そのときは、
「蓮田の家」撮影 白石隆治
「椿山の家」撮影 小泉一斉
窓のすぐ上に少し深めの(奥行きのある)庇を設けて
雨の吹き込みを防ぎます。
このとき、デッキに雨が落ちてデッキが傷みやすくなるという
心配がありますので、庇に小さな雨樋をつくってつけるか
それができない場合は、デッキの材料を水に強いもので
検討しましょう。
この2つ家のデッキ材は、杉に窒素を加圧して入れ、
腐りにくくしています。
薬品で防腐処理をしたものは、防腐処理剤が有害な場合が多く、
素手で触るのは危険ですので、そういうものは使わず、
人畜無害でできるだけコストがかからないものを選んでいます。
軒を出せない場合
密集地で軒を出せない場合もありますね。
その場合は、
「おゆみ野の家」
やはり、窓上に庇を設けて雨を凌いでいます。
密集地の場合は、軒を出すとその分、
家を建てる面積が減ってしまうことがあるので
軒を出さずに庇で対応します。
ゴツイ(分厚い)庇だと野暮な感じになるので
できる限り薄い庇にしてスッキリとした感じにします。
薄くても、この庇は構造的に強く、この上に人が乗っても
全然大丈夫なようにつくっています。
工事中は、この庇の上に板を載せて足跡がつかないようにして
足場がわりに、外壁工事ができるほど、この庇は頑丈です。
庇があることで、陰影ができて奥行き感が出て外観の印象も
よくなると感じています。
バルコニーが軒の代わりに
軒を深くしたり、庇を設けたりすることで
雨の日でも窓を開けておけるようにしてきた家を見てきましたが
それ以外の方法もあります。
「四街道の家」撮影 小泉一斉
「土間から四季を、呼吸する家」撮影 小泉一斉
それは、バルコニーを屋根代わりに使って
窓から雨が入ってこないようにする方法です。
上の2つの事例は、いずれも1メートル以上バルコニーが出ていて
それでその下の窓から雨が入ってこないようになっています。
「土間から四季を、呼吸する家」撮影 小泉一斉
サッシの機能を活かす
サッシそのものの機能を活かす方法もあります。
これは洗面化粧台のカウンターの上に設けたサッシですが
「椿山の家」
「横すべり出し窓」と言って突き出すタイプのサッシです。
写真を見ていただければおわかりの通り、
開けると屋根と同じような角度になるので
多少の雨が降っても、開けておいて雨が入ってくることは少ないです。
こんなに小さな窓でも、開けて換気できるのはこの時期(梅雨時期)は
とてもありがたいことです。
また、こちらは玄関に設けたサッシですが
「椿山の家」
「オーニング窓」と言って、何枚かのガラス部分が
横すべり窓のように開いて、換気してくれます。
こちらも多少の雨なら開けておくことが可能です。
もちろん、網戸もついていますから
虫は入ってきません。
意外と玄関は空気がこもりがちで
モワッとした感じになっていることが多く、
梅雨時期は特に換気したくなる場所ですので
こうした換気窓があるととても快適になると思います。
「椿山の家」
このようなオーニング窓なら外出の時も
少し開けていけるのではないかと思います。
(ここから侵入するはかなり難しいと思いますし、
玄関ドアの鍵とは反対の位置にサッシを
設けているので防犯性は高いと思います)
横すべり出し窓もオーニング窓も、閉めると気密性も高く
寒さにも効果的な窓であることも良いところです。
雨の日でも窓を開けておける工夫のまとめ
この梅雨時期の湿気対策、換気対策を考える場合、
深い軒を設けたり、窓に庇をつけることが大事なんですよね。
軒を深くすることができない環境ならば、
余計に窓上の庇が大事だと思います。
バルコニーをつくるときも、ただ単にバルコニーのことだけ考えるのではなくて
その下にある窓への良い影響を考えてバルコニーをつくると
暮らしやすさが増すことになります。
こうしたことを考えた上で、その次にサッシの特性を活かす使い方を
考えると、さらに梅雨時期の快適性が増すことになります。
ですので、どんなサッシを採用したら効果的か?
考えることもとても大事です。
軒や庇、サッシは
単に見た目だけのデザインで決定されるものではなく、
気候という自然環境に対してどういう形態が良いか?
を考えることこそが、本当のデザインだと思います。
また、こうして設けた軒や庇は梅雨時期に活躍するばかりでなく、
その後にやってくる真夏でも、直射日光を遮り室内を日蔭にしてくれます。
軒先や庇にすだれをかければさらに涼しくなるというように
多機能性を持っているのです。
皆さんの家づくりの参考になりましたら幸いです。