ひとおり、ひとおり
今日の“ほぼ日”に触発されて。
「おゆみ野の家」の外壁は、“一文字葺き”というつくり方の板金仕上です。
実際につくる前に、こうやってサンプルをつくって、
重ね方や、一枚一枚の大きさのバランスを確認しつつ、
作業性や材料の無駄がで無いかを確認したんです。
更に、とくに、つくり方が難しい部分の角(出隅)のサンプルもつくって、
折り曲げたとき、どこまでエッジを出せるか?
または、逆にエッジを効かせすぎずに柔らかさを出せるか?
を検討しました。
既製品を使えば、一枚で折り曲げることなく、
角で板金の板同士をかしめて、エッジを効かせる仕上りがつくれるのですが、
「おゆみ野の家」では、既製品を使うこと無く、
一枚一枚を手で切り出し、接合部も角の板も人の手で
つくったり、折り曲げたりしています。
なので、角の部分は、板金という堅い素材なのに、
柔らかさを併せ持った表情にできています。
外壁の板金の板、一つ一つを留めていく部品を“吊子(つりこ)”というんですが、
それも、こうして、一つ一つ、手でつくっています。
こうして、部品を一つ一つ手でつくって行き、そして今度は
その部品を一つ一つ、これまた手で付けていきます。
なにしろ、全部手づくりで、なかなか仕事が進みません。
もの凄く、効率は悪いです。
板金屋さんも、監督も、私も、効率よりも
ひとつひとつ、しっかりと手でつくることを
大事に考えていました。
それを大事にすることを前提に「もっと効率よく出来ないか?」
って考えていました。
なかなか、効率よくいきませんでした。
そして、出来あがった外壁は、もの凄い密度で、
しかも、手仕事の良いゆらぎみたいなものが出ていて
堅いのに柔らかいという矛盾がうまく出ているように思います。
この仕事も、完成させることが目的の一つであることは間違いありませんが、
それと同じか、それ以上に一つ一つ手でつくり、ひとつひとつ手で付けていく
という過程も、「つくりたい」という気持ちがあって、それが大切な目的に
なっていると思います。
これからも、「つくりたい」気持を大事にやっていきたいと思います。
「おゆみ野の家」
千葉県千葉市緑区
家族構成 夫婦+子供2人
構造・規模 木造2階建(120.28㎡/36.38坪)
設計監理 野口修アーキテクツアトリエ
tel 043-254-9997