手刻み
これから工事が始まる「おゆみ野の家」は、
柱や梁を大工が墨を付け、手で刻んで加工していく予定です。
昔では、当たり前だったこの「手刻み」も、
今では、コストアップや時間が掛かるということで
敬遠され、機械による加工「プレカット」が主流となりました。
プレカットも精度や加工技術が向上して、
手刻みよりも“正確さ”という性能でも、もはや上かもしれません。
ただ、プレカットでできる継手や仕口は、
鎌継、蟻継(他の加工もできるところも僅かですがあるようです)程度で、
2本の材料を繋ぎ合わせることの欠点を補う“追掛大栓継”などは出来ません。
木造の軸組み(構造的な骨組み)では、4メートルの長さの材料が
一般的に流通している基本的な長さなので、しばしば2本の材料を繋ぎ合わせる
“継手”という場所がでてきます。
その継手に先述の“追掛大栓継”を採用して、その弱点を補う工夫が
手刻みではできます。
それだけでなく、手刻みでは、大工がその木材の固体の特徴を見て、
適材適所に振り分けて行きます。
また、一針一針手で縫っていく裁縫と同じで、
一刻みごとに、気持が込められています。
この「気持ち」は科学的に、いま、その効果を説明できませんが、
気持が込められていない仕事よりも、良いのではないかという感覚は
共感して戴けるのではないでしょうか。
こうして刻まれた材料が組みあがって「上棟」という、
家づくりの一大イベントを迎えることができるのです。
写真は、9年前の夏に撮った「ANA nHOUSE」の木の柱、梁です。
「おゆみ野の家」の刻みが始まりましたら、
またこのブログで紹介させていただきます。