記憶の庭
昨日、改善工事が行われている「印旛の家」へ。
奥に見える庭の植栽は、長い間、誰にも関心を持たれない「ただの木」に
なっていました。
ここにあった御母屋に人が住んでいた江戸時代後期から昭和40年半ば頃までは
この庭はとても丁寧に手入れのされた見事な日本庭園でありました。
(御母屋には平成9年頃までご主人のご両親が住まわれていました)
庭の主役である槇の木は、腕の知れた植木職人が無償で良いから手入れを
させて欲しいと申し出るほどの木であったようです。
時代の移り変わりの中で、子供たちが巣立ち、、
御母屋に住む人が減ると同時に、冬の寒さが身にしみたり、
設備の古さに不便を感じたり、そうこうするうちに
広い敷地の中に立派な「離れ」が建てられ、
とうとう御母屋に人が住まなくなり、庭も放置されたようです。
御母屋は人が住まなくなったことで、メンテナンスされず、
次第に朽ちてゆき、とうとう物理的にも機能しなくなりました。
そして、今回、御母屋が解体され、そこに新しく「印旛の家」が
建てられました。
そのとき、建主である、ご主人より「東の庭を見えるようにして欲しい」
というご要望があり、試行錯誤の上、上の写真のような構成になりました。
このことで、東の庭は、まだ荒れてはいますが、新しい命が入れられました。
ご主人が「東にの庭を見えるようにして欲しい」というご要望を
仰ったのは、幼少期の御母屋の思い出があるからで、
庭そのものの思い出というよりも、
その庭の空間で繰り広げられた家族との思い出が
東の庭にあったからに他なりません。
ご主人にとって、東の庭や手入れのされていない木々は
単なる場所やただの木ではなく、かけがえのない場所や木々で
あるのです。
いままで、単なる場所、ただの木として放置されていた
庭と木々が「印旛の家」を建てることによって、
記憶が呼び戻され、新たな命が与えられました。
「印旛の家」は1月11日(土)に完成見学会を行います。
詳しくは<コチラ>をご覧いただきまして、ご応募ください。
皆様のお越しをお待ちしております。
「印旛の家」
千葉県印旛郡
木造平屋建 110.48㎡(33.53坪)
設計監理 野口修アーキテクツアトリエ
tel 043-254-9997
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