2つの水盤

日記

先日訪れた「京都国立博物館」。

設計は巨匠 谷口吉生。

細い列柱に支えられた薄い庇の水平ライン。
障子のようなフロストガラス。
奥の部分は縦のルーバーが軽快で
いずれも日本的な意匠になっている。

エントラントまでは長いアプローチ。
その左右に水盤がある。

よく観察をすると、同じ水盤でも
全く意味合いの違うことに気がつく。

向かって右側の水盤は、
奥のテラスに接続され、
そのテラスから見るためにつくられている。
そのため、水盤の縁は岩が積みで上げられ
その内側で流れ落ちた水が処理されている。
外部空間から見ることを意識した水盤になっている。

一方、向かって左側の水盤は、
建物内部から見るためにつくられている。
列柱の下にある石敷きの部分は
中から出ることが禁じられていて出ることができない。
要はビジュアル的な要素としてしか機能していない。
内部から水盤を見ると、風で漣ができた水が
水盤の縁で断ち切れる。
ジェフリー・バワのインフィニティプールの如く
水面の端が消えていくようになっている。
漣が立ち、自然光によって光るその水が
空と一体になって消えていくその様は
とても優美で見ていて飽きない。
外から水盤の縁を観察すると、
磨かれた黒い石が立ち上げられ、
溢れた水はその石を舐めるように落ちて
その下に用意された側溝で処理される。
黒い石は、存在が消されているので、
ただ水が落ちているような感じになっている。
(内部からの撮影は禁止)

同じ水盤でも、それにつながる空間や
その場を使う人の動きや感じ方を考えて
違う表現を使い分ける。
当たり前のようなことですが
なかなかできないことだなと
感心した体験でした。

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