「建具」 アルミサッシ

いろいろ

「建具」について、7日間に渡り
紹介してきましたが、
今日で最終回です。

住宅(建築)において、
「建具」が空間や機能に与える影響は大きく、
見た目はもちろん、触り心地、開閉方法など
設計のときに考える要素がたくさんあります。

*「建具」とは、引戸や開戸(ドア)、襖や障子など
 一般の方から “ ドア ” と呼ばれているものを意味しています。

目次
1.障子
2.木製サッシ
3.内部建具
4.玄関ドア
5.引出
6.扉、取手・ハンドル
7.アルミサッシ

最終回の今日は「アルミサッシ」についてです。


撮影 小泉一斉

アルミサッシの性能の向上は
ここ5年くらいの間で飛躍的に伸びています。
フレームがアルミだけでできているもの、
例えばリクシルだとデュオPGがなくなり、
サーモスシリーズのアルミと樹脂の複合サッシが
主流で、樹脂サッシを採用している住宅も多く見かけます。

それと同時に、
ガラスの性能も飛躍的に向上しており、
生のガラスだけを使うサッシは、
ほぼ無くなったと言っても良いと思います。
Low-Eガラスの複層ガラスが当たり前に
使われる時代になっています。
トリプルガラスを採用しているケースも
珍しくありません。

これは、住宅の断熱性能向上が
社会的な要請になっていることを受けて、
国もメーカーも力を入れて広めているからに
他なりません。

このブログ記事では、
アルミサッシの性能について
記載するのではなく、
アルミサッシの使い方について
過去の事例を見ながら
解説していきます。
アルミサッシの性能については
リクシルやYKK、三協アルミなどの
サイトでご確認ください。

*以下、「アルミサッシ」という表記は
 アルミと樹脂の複合サッシも含みます。




アルミサッシは、メーカーによってつくられるもので、
オーダーメイドすることができません。
ただ、サイズなどは、メーカーが指定している範囲で
特注することは可能です。

アルミサッシを使用することは
コストを抑えるという意味もありますので、
無理に特注するとコストに影響があるので
できる限り規格内のサイズのものを使用したいところです。

また、アルミサッシは木製サッシに比べ
耐久性があることも魅力の一つです。
それが故に、アルミの素材感が
冷たく感じたりチープに感じたりするという
ビジュアル的なマイナス部分もあります。




まず掃き出し窓から見ていきます。

掃き出し窓は、大きな窓なので
かなり外観にも内部空間にも影響を与えます。

埼玉県「椿山の家」では、


以上、撮影 小泉一斉

このように、アルミの全開サッシを
LDKとスタディスペースの全ての窓で採用し、
内外のつながりが強くなるようにしています。

サイズも、できる限り規格サイズとし、
余計なコストアップにならないように
注意しています。
(高さ方向は全て規格サイズ、
 幅方向は空間に合わせてサイズをオーダーしています)

葉山「土間から四季を、呼吸する家」では、


撮影 小泉一斉

リビングダイニングの床を土間仕上げにしたので、
土間用のアルミサッシを採用しています。
本来はここも全開サッシにしたかったのですが、
メーカーからの保証を受けることができない
ということから、
やむなく土間用断熱サッシを採用しました。

このサッシも規格サイズのものを採用しながら
天井までのサッシとして、
空間が広く見えるようにしています。

また、これは掃き出しサッシではないのですが、


撮影 小泉一斉

採光と通風の小窓も、
上にカウンターを設けることで、
アルミサッシがインテリアと一体的なります。

一方で、板の間の方は、


撮影 小泉一斉

アルミの全開サッシを採用し、
庭と板の間の距離感を縮めています。
もちろん、規格サイズを採用しながら
天井までのサッシとしています。


撮影 小泉一斉

外には、引き込まれたアルミサッシを隠すように、
外壁と同じ材を使って戸袋をつくっています。

このように、アルミサッシの規格サイズを使いながら
空間にフィットさせるように設計の際に工夫をしています。
このことで、アルミサッシを使っても、
家とサッシがバラバラなものにならず、
一体的なものとして感じることができるようになります。




ここからは、アルミサッシの組合せや
そこし特殊な使い方を見ていきます。

千葉県「四街道の家」の浴室サッシですが、


撮影 小泉一斉

片引戸のアルミサッシにしている例です。
これは、引き違い窓の半分を使い、
片引戸にしています。
防水の納まりや壁との関係を
十分検討する必要がある使い方です。

全開して、浴室と坪庭が一体的になり、
外を感じながらの入浴ができます。

千葉県「ちはら台の家」では、


撮影 垂見孔士

さらに細かく寸法を見ていき、
アルミサッシのフレームを全て隠し、
ガラスの部分だけが見えるようにしています。
そうすることで、閉めている時でも
壁に穴がぽっかり空いたようになり、
印象的な窓になります。

写真では窓の先がブロック塀になっていますが、
撮影後、坪庭が完成しています。

これらの方法は、外付サッシを利用した方法で、
今の断熱サッシには外付サッシが用意されていないので
もうこのような工夫をすることができなくなりました。

メーカーが用意しているアルミの全開サッシを
使うという方法もありますが、
相当コストアップになるので、
金額面で採用ができないということになりがちです。

サッシを洗面で使うときの方法を見ていきます。


撮影 小泉一斉

これは、埼玉県「椿山の家」の洗面です。
水が掛かる部分の手元には、横滑出し窓を
入れて光を取りつつ風を入れるようにしています。
アルミサッシは水に強いので、
このような場所に最適です。
天井付近にもFIX窓を入れて
自然光を取り込んで、
暗くなりがちな洗面を明るくしています。

千葉県「ぼくらの家」も同様に、

光と風を入れる洗面にしています。

キッチンも、比較的暗くなりがちな空間なので、


撮影 小泉一斉

千葉県「鎌ケ谷の家D」のキッチンのように、
床から天井まで縦長の段窓を入れ、
自然光を取り込んでいます。

キッチンが暗くなりがちなのは、
設備や家具、家電などで壁が埋まり、
窓のスペースが取りづらいことと、
それほど広いスペースでないところに
耐力壁を設ける必要にも迫られ、
窓を作る余裕がないということが
原因です。

ですので、上の写真のように、
耐力壁を避けつつ、
コンロとの距離感も考えると、
それほど広い幅を確保することができないので
縦長にしてサッシの面積を確保するということです。
ちょうど良い高さのところに
横滑出し窓を設けて風も取り込みます。

やはりアルミサッシは、
段窓をつくりやすく、
このようなケースに向いています。

風や光は、洗面やキッチンだけに必要なわけでなく、
くつろぎの空間にも必要です。


撮影 小泉一斉

千葉県「鎌ケ谷の家D」の
読書などをするくつろぎの場所では、
本棚の下に片側がFIX、
片側を横滑出し窓にした地窓を用意しました。
アルミサッシの良いところは、
こうして連窓をつくりやすいところにあります。

地窓なので、外からの視線が入ってくることはなく、
風を取り込むことができ、
床に反射した柔らかい光が
ちょうど良い明るさをもたらせてくれます。

千葉県「ぼくらの家」では、
ダイニングの角に大きな窓を設けて
開放的な空間にしています。

南側は引き込むことのできる壁があるので
木製の全開サッシを設けることが可能でしたが、
西側は引き込むための壁のスペースがなかったので、
幅いっぱいにFIX窓にすることとしました。
そうすることで、サッシのフレームがなく
綺麗に外を見ることができるのですが、
風を取り込むことができません。
そこで、FIXの下にアルミの横滑出し窓を2つ
設置して風を取り込むようにしました。
そのサッシは、FIXと柱、梁のような木材で
分けているので、アルミ臭さが少し消えています。
風を通すという機能と、アルミ臭さを消すという
意匠をできるだけ両立させるように工夫しました。




家を建てるときに、
アルミサッシ無しでは、考えにくいです。
ただ、アルミサッシは金属であるが故の
素材感がマイナスに働くことがあるので、
それをどうやって消すのか?
あるいは、
どうやって空間や外観と一体的なものにしていくか。
それをコストを意識しつつ工夫していくことで
アルミサッシを活かすような使い方が
できてくるのではないかと思います。




7日間を通して「建具」について連載してきました。
家にとって「建具」というものがどれほど重要で
工夫次第で大きく家の価値が変わってくるものですので
家づくりをする際には「建具」について
十分考えながら進めていっていただければと思います。

明日からは、しばらくいつも通りの
日々のことをテーマにしたブログになります。

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