子供室のささやかな工夫
私は、いま、夏休み中なのですが、
その時間を利用して毎日、事務所の掃除をしています。
小さな事務所なのですが、徹底的に掃除をしようと
始めてみると、なかなか大変で、
収納内部の掃除だけでもかなり手こずっております。
もう少し広い事務所なら、
収納の整理などしなくても、日々増えていく雑多なものも
いまほど苦労せずとも仕舞うことができるのにと、
思いながら掃除を黙々と進めているところです。
ただ、限られたスペースの事務所でも、
できる限りに工夫をして
収納スペースをつくり出したからこそ、
ものが溢れかえることなく
空間を使えていることは事実です。
先日、引渡しをした
千葉県の平屋「ぼくらの家」でも、
限られた敷地に5人家族のための空間を
要望を取り入れながら
できる限りコンパクトに収めるには
どうするのが良いのか?考えました。
必要な部屋は、
玄関、ホール、キッチン、ダイニング、リビング、
寝室、寝室のウォークインクローゼット、子供室3室、
姉妹共用のウォークインクローゼット、
ご主人のワークスペース、グランドピアノを置くピアノ室、
トイレ、洗面、脱衣室、浴室、
そして、それぞれの収納。
できるだけ家族で使うリビング、ダイニング、キッチンは
広くゆったりとしたいので、それぞれの個室を
極力小さくできるように、特に子供室は
ミリ単位で寸法を検討しました。
長女の部屋を見ています。
梁や束(屋根を支える短い柱のようなもの)があらわされて、
和的なデザインを狙ったかのようですが、
そうではありません。
梁や束を壁の中に隠そうとすると、
壁が厚くなり、床の面積を数センチ狭くしてまって、
ベッドを置くことができなくなるので、
壁を薄くして梁や束が出てきたということです。
もちろん、ベッドが置けるように床の面積を広げれば
梁や束を壁の中に隠すこともできますが、
限られた敷地の中では、そう簡単に床を広げることはできません。
それと、床の面積が増えれば基礎や屋根の面積も増えるので、
工事費が上がってしまいます。
そこで、建物全体の面積は抑えつつ、
壁を薄くして子供室の床の面積を広げる工夫を
したということです。
この写真は次女の部屋です。
長女の部屋の薄くした壁の反対側が
次女の部屋になっています。
お互いの部屋が壁が薄くなったことで、
床が広がっています。
(奥に見える青い壁の空間が姉妹共用の
ウォークインクローゼットです)
壁を薄くして数センチ床を広げる工夫はしましたが
それだけでは、やはり狭いので空間を立体的に使い、
ウォークインクローゼットの上にロフトをつくりました。
ウォークインクローゼットの奥行きは1.82M(1間)。
この寸法では、ロフトにベッドを置きたくなっても
置けないので、ロフトの床を45センチ跳ね出させて
寸法を確保しました。
次女の隣にある長男の部屋も同じように壁を薄くし、
ロフトの床を跳ね出し、寸法を確保しています。
床面積を確保するためなら
空間のデザインが犠牲になっても良い
ということにはなりません。
ただどうしても、構造的に梁や束は必要で、
壁を薄くすると出てきますので、
それを見越した上で、他の部分も検討し、
少なくとも空間の統一感というか、
できる限り良くしたいと言う気持ちで
「ここはこうつくろう」という意識を持って
いくことは大事だと思います。
「ぼくらの家」の子供室は、
ウォークインクローゼットを含め、
梁や柱を全体的にあらわす表現にしています。
垂木や根太といった、副構造材もあらわし、
骨組みを見せて軽快な印象になるようにしています。
子供たち(とはいっても、大学生、高校生、中学生)が、
気に入ってくれたかどうかはわからないのですが、
(もちろん、気に入ってくれたら嬉しいです)
一つの建物としては、筋を通せたのではないかと
思っています。
ものを置くことができるという機能と、
その場合に合わせたデザインと、
それにかかるコストを同時に
あるレベルで満足させる工夫が
いつも住宅建築には求められています。
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