どうやって設計しているのか?
5)「敷地を読むとは、敷地を味わうこと」

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私は野口修アーキテクツアトリエという木造住宅を中心に
千葉市の稲毛区というところで設計事務所をしています。
独立して22年を超え、今までの設計を振り返って考えることも
多くなりました。
設計をどうやってるのか?を
わかりやすくお伝えしていくことが、設計事務所や建築家の
敷居を本当の意味で下げることの一つだと思いまして、
今日から10回に分けて、
建主さんと出会う前から最初の案をお出しする
プレゼンテーションまで、
私が「どうやって設計しているのか?」
をできる限りわかりやすくお伝えしていこうと思います。

それから先の設計につきましては、
また機会をつくって、お伝えさせていただきます。


野口修一のプロフィール


目次

第1回 「実は “ お仕事 ” では無いんです」
第2回 「あなたの依頼がなくとも、あなたの家の設計はすでにはじまっています」
第3回 「わかりやすい言葉にしていく」
第4回 「設計が始まるきっかけ」    「建主さんを知るために聞き、話し、考える」
第5回 「敷地を読むとは、敷地を味わうこと」
第6回 「役所に行くのは自由度を得ようとするため」
第7回 「設計は図を描くことではない」
第8回 「パースは、建主さんと自分自身に伝えるもの」「全体と部分を確認できる。それが模型」
第9回 「カタチを言葉に戻す。これが大事」
第10回 「設計(プランニング)の過程を整理する」「一緒に家をつくるために、まずは一人で」




第5回 「敷地を読むとは、敷地を味わうこと」

前回のヒアリングの後か、直前かどちらかのタイミングで
敷地を見に行きます。

見に行くというより「感じる」とか「味わう」という方が
近いかもしれません。
どのような道路とくっついているのか?これは大事な基本です。
体感的な広さ。
密集度。お隣さんが迫ってきてるのか、周りは開けているのか。


隣家の窓の位置を確認


隣家の室外機などの位置を確認

集落か住宅地か。どっちの要素に近いか。
造成された人工的な土地か、それとも違うのか。
日蔭になりやすい場所はどこか。
周辺の家の建ち方。窓や屋根、設備機器。
弱点はどこか。そこを良いものに変えられるといい。
なんと言っても、その土地の雰囲気はどういうものか。

ある季節のある時間に数度、敷地を見るだけなので
その敷地のことを全て知るということができないからこそ、
自然的要素は方位はもちろん、気象データなどを使って知っていくと同時に、
やっぱりその土地に行った時の自分自身の感じ方がとても大事です。
この辺のことも建主さんと一緒に検討していくことになります。
私の経験であったことですが、
ある大きな敷地に家を建てるときに、
東側に既存の建物があったのですが、それは平家だっということもあって
それほど新しい家に影響を及ぼすとは私には思えず、南と東に開いた家を
設計しようとしたところ、建主さんが「東は陰気な感じなので」
と言われ、東側に開くことはやめて設計していったのですが、
設計が進む過程で、何度となくその敷地に足を運んでいくと
確かに建主さんがおっしゃっていたように東側はジトッとした雰囲気の場所だと
いうことがわかって「東側に開かなくて良かった」と思ったことがありました。
建て替えの案件だったので建主さんは、そこにずっとお住まいになられていたので
その土地固有の雰囲気を知っていたのです。
また別の家では、西側にしか道路が無く、西側に玄関を設計しようとしたところ
建主さんが「この辺の地域では、みんな東に向けて玄関をつくっているので」
と、私たちにはわからないその地域の風習を教えてくださって
道路とは反対の東側に玄関をつくったことがありました。
ですので、敷地を見る、専門用語では「敷地を読む」といいますが、
数回敷地に行っただけでは読むことのできないことも多くあるのも事実です。
ですが、できる限り敷地を読んで設計にあたり、
その上で、建主さんと一緒に検討を重ねていくというのが
私のやり方になります。

つづきます。


野口修アーキテクツアトリエの設計事例
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